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採用で伝える自社の魅力を、4つの観点で整理する
採用
求人票や会社説明会で、自社の魅力が伝わらない。そう感じたら、使っている言葉を見直してみてください。「成長できる環境」「風通しの良い職場」のように、どの会社も使う言葉が並んでいることがよくあります。
自社の魅力は、社内の人ほど当たり前に感じていて、言葉にされていません。観点を決めて整理し、ほかの会社と比べられる言葉にする必要があります。
魅力は、競争優位を起点に 4 つの観点で整理する
採用の世界では、理念・仕事・人・待遇の 4 つで会社の魅力を整理します。ここではそれを、次の 4 つの観点として使います。
- ビジョン・戦略: 何を目指し、どうやってお客様に選ばれている会社か
- 仕事内容: 入社した人が、どんな仕事を、どんな裁量で担うか
- 制度・報酬: 給与、評価、働き方の制度
- 組織風土: どんな人たちが、どんな考え方で働いているか
4 つの観点は、ばらばらに書き出すのではなく、事業の競争優位を起点に整理します。競争優位とは、自社がお客様に選ばれている理由です。選ばれている理由が分かれば、何を目指してどう戦う会社か(ビジョン・戦略)が言葉になります。次に、その理由をつくっている仕事(仕事内容)が見えます。最後に、その仕事を続けられている考え方(組織風土)に行き着きます。3 つの魅力が同じ一つの理由でつながるので、求職者にも筋の通った会社として伝わります。
制度・報酬だけは、この流れの外にあります。求職者が必ず比べる観点で、大きく見劣りすれば、ほかの魅力は読まれません。一方で、ほかの会社も同じ水準に合わせやすく、長く続く違いにはなりにくい観点です。見劣りしていないかを確かめたうえで、違いは残りの 3 つで伝えます。
競争優位は、バリューチェーンで探す
競争優位を探すときは、バリューチェーン(価値連鎖)の考え方を使います。事業を、お客様に価値が届くまでの工程と、それを支える人事・技術・管理の活動に分けて並べます。製造業なら、仕入れ、製造、出荷、販売、アフターサービスの順です。サービス業なら、集客、提案、提供、提供後の対応のように置き換えます。
工程を並べたら、それぞれについて「ほかの会社と違うやり方をしているところはどこか」を書き出します。たとえば、工場の自動化に使うセンサーや制御機器をつくるメーカーがあるとします。同じ業界の多くのメーカーは、自社が得意な機器を単品で売り、ほかの会社の機器とのつなぎ込みはお客様の工場に任せています。このメーカーは、センサーから制御機器、安全のための機器までを自社でつくっていて、お客様の生産ラインと同じものを自社の拠点に組み、動かして見せてから導入を決めてもらっています。お客様は、自社のラインを止めずに効果を確かめられます。違いがあるのは製品そのものではなく、販売の工程での見せ方です。お客様がこのメーカーを選び続ける理由がそこにあるなら、それが競争優位です。拠点でお客様のラインを組む技術者の仕事は、会社が選ばれている理由をつくっている仕事として説明できます。ここまで分かれば、ビジョン・戦略は「組み合わせて動かして見せられるメーカーとして選ばれる」、仕事内容は「お客様のラインを拠点に組み、試してから導入してもらう」と書けます。
組織風土は、見えるものと掲げている言葉から書き出す
選ばれている理由をつくる仕事が、なぜこの会社では続けられているのか。それを説明するのが組織風土です。組織風土を言葉にするときは、組織文化の研究者エドガー・シャインの考え方を使います。シャインは組織文化を、次の 3 つのレベルに分けました。
- 人工物: 会議の進め方、資料の作り方、席の配置など、外から見える行動や仕組み
- 標榜されている価値観: 行動指針や標語など、会社が掲げている言葉
- 根底にある前提: 当たり前すぎて、誰も口にしない考え方
1 は、社員が毎日目にしていることを書き出せば集まります。2 は、行動指針や社内でよく使われる言葉を集めます。そのうえで、1 の行動それぞれに「なぜそうしているのか」を尋ねると、2 の言葉とのつながりが見えてきます。
前提は、外から聞くと言葉になる
3 の前提は、社内の全員が共有しているため、社内では疑問に思われません。けれども、入社した人が最初に戸惑うのは、たいていこの前提です。採用で伝えておかないと、入社後に「聞いていた話と違う」という食い違いが生まれます。
前提は、1 の行動と 2 の言葉のずれに表れます。たとえば「挑戦を歓迎する」と掲げているのに、会議では前例のない提案がほとんど出ない会社には、「失敗は避けるべき」という前提があるのかもしれません。反対に、規則にはしていないのに、どの部署でも新しい企画の最初に「この製品で誰の困りごとが解けるか」を確かめているメーカーには、「社会の役に立つかどうかで判断する」という前提があります。こちらは、そのまま強みとして伝えられます。
前提を探すには、次のような質問が役に立ちます。
- 新しく入った人が、最初に戸惑うことは何ですか
- 言われなくても、全員が守っていることは何ですか
- 掲げている言葉と、実際の行動が違う場面はありますか
社内の人どうしでは、この質問にうまく答えられません。前提を共有していない外の人が尋ねることで、はじめて言葉になります。
記入例: 4 つの観点を 1 枚の表にする
ここまでの整理を、1 枚の表にまとめます。次は、工場の自動化に使うセンサーや制御機器をつくっている架空のメーカーの例です。整理後の言葉は、整理前の言葉が言おうとしていたことを、行動と事実で言い直したものです。
| 観点 | 整理前の言葉 | 整理後の言葉 | 裏付けの事実 |
|---|---|---|---|
| ビジョン・戦略 | 世界に誇る技術力 | センサーから制御機器、安全のための機器までを自社でつくり、組み合わせて動かせる技術で選ばれる。国内外の拠点でお客様のラインを再現し、試してから導入してもらう | 国内外の拠点で、お客様の生産ラインと同じものを組んで動かして見せてから、導入を決めてもらっている |
| 仕事内容 | グローバルに活躍できる | 海外のお客様の工場にも、日本と同じように営業と技術者が入り、困りごとを聞いて解決策を設計する。入社後の早い時期から海外の案件に加わる | 売上の半分以上が海外。海外の工場への提案にも、日本の技術者が同行している |
| 制度・報酬 | 充実した福利厚生 | 海外への赴任と出張を、家族の暮らしまで含めて支える。給与は同じ業界の大手と同じ水準 | 海外に赴任する社員の家族の住まいと、子どもの学校の費用を会社が負担している |
| 組織風土 | チャレンジできる風土 | 新しい企画は「誰の困りごとが解けるか」で判断して後押しする。前提は「社会の役に立つかどうかで判断する」 | 新しく入った人が最初に驚くのが、企画の会議で最初に「この製品で誰の困りごとが解けるか」を問われること |
整理後の言葉は、そのまま求人票に書けます。面接では、「当社では、新しい企画を『誰の困りごとが解けるか』で判断しています。これまでの職場では、新しい提案はどのように決まっていましたか」のように、同じ内容を候補者に尋ねられます。行動の言葉にしておくと、誰が求人票を書いても、誰が面接をしても、同じ基準で会社を伝えられます。
まずは、1 枚の表から
4 つの観点を縦に、「整理後の言葉」と「裏付けの事実」を横に並べた表を、自社でもつくってみてください。事実の欄が埋まらない観点は、まだ言葉になっていない観点です。
私たちは、採用の設計をこの表を一緒に埋めるところから始めています。社員の方への聞き取りで行動を書き出し、前提は外の立場から質問して言葉にします。整理した言葉を、求人票と面接で同じように使えるようにするまでが、私たちの役割です。

